2005年09月29日
希望の玩具箱のような映像祭
小さい頃、俺の家はあまり裕福な方ではなかった。かつて国際通りにあった山形屋の玩具売場で「ラジコンが欲しい」と母親にごねていたら、姉ちゃんがラジコンなら家にあるよ、と言うもんだから小躍りして帰ると勿論そんなものは無かった。代わりに、へっへっへと唇の右端を吊り上げながらダンボールにハサミを入れて、何やら車らしきものを作り、「はいラジコン」と渡された。欲しかったのはそれじゃない、と腹を立ててそれを掴み箪笥に投げつけたら車の屋根が取れた。 一瞬しまった、と思って姉ちゃんを見ると、眉毛がローマ字の「S」を横にしたような形になっていた。涙は流れていなかったけど、泣き顔より悲しそうだった。俺は胸に枯れた巨木が突き刺さった様な気分だった。こっちまで泣きそうになって、その場から離れようとすると後ろから飛び蹴りをされた。それ以来、女を基本的に警戒している。
屋根の取れた車。名付けなければ「車」かどうかの判断すら危うい。どうせならオープンカーにしようと思って、屋根はそのままにして、タイヤとハンドルをつけて、マジックで窓を描いたらそれらしく見えてきた。少し愛着も湧いてきた。「格好いいさー」とつい、こぼして「はっ」となった。俺は、それを“ピスクラード”と名前をつけて怪獣と戦うヒーローの専用車輌として使う事を決定した。
強いて言えば、根暗な方だった俺は、押入れでよく一人遊びをしていた。真っ暗な押入れで懐中電灯に照らされたピスクラードは空を飛ぶ。宇宙空間を漂いながら、ふわふわゆらゆら、と。想像は無限に広がった。闇に浮かび上がった無敵の車は星と星の間をすり抜けていく。姉ちゃんは、そんな俺を見て「根暗」と言った。
夏の終わりに毎年、映画おじさんがやってきて映画をみせてくれた。
「今晩7時から、○○団地の緑公園にて映画を上映します。お誘い合わせの上、是非来てください。繰り返します・・・・」
と、軽貨物の拡声器から映画おじさんがアナウンスをした。母親から100円もらって、50円でマウンテンデューのシャーベットを買って、50円を入場料で払ってブルーシートの最前列を陣取った。野外だから、虫も集まってくるが、全然気にならない。7時少し過ぎると、おじさんがたどたどしく挨拶をして早速映画が上映された。カタカタカタとフィルムを回す機械の音が印象的で、薄暗くなった緑公園に照らされた映像は、押入れでピスクラードに懐中電灯を当てている時と重なった。内容はよく覚えていないけど、皆で映画を観るのは気分がよかった。ドキドキした、非日常だった。
この感覚をわすれたくなかった。
そっか・・・俺は皆で感動を共有したいんだな・・・。
映像祭。
沖縄映像祭。
一日の終わりになるような。明日の始まりになるような。
戦場で美しい映像が流れたら人は、武器を置いて見てくれるだろうか?
現実という途方も無いリアリティーのなかで、希望の玩具箱のような映像祭をこの島でまた、開催したい。と、俺は思う。
下ジーン
屋根の取れた車。名付けなければ「車」かどうかの判断すら危うい。どうせならオープンカーにしようと思って、屋根はそのままにして、タイヤとハンドルをつけて、マジックで窓を描いたらそれらしく見えてきた。少し愛着も湧いてきた。「格好いいさー」とつい、こぼして「はっ」となった。俺は、それを“ピスクラード”と名前をつけて怪獣と戦うヒーローの専用車輌として使う事を決定した。
強いて言えば、根暗な方だった俺は、押入れでよく一人遊びをしていた。真っ暗な押入れで懐中電灯に照らされたピスクラードは空を飛ぶ。宇宙空間を漂いながら、ふわふわゆらゆら、と。想像は無限に広がった。闇に浮かび上がった無敵の車は星と星の間をすり抜けていく。姉ちゃんは、そんな俺を見て「根暗」と言った。
夏の終わりに毎年、映画おじさんがやってきて映画をみせてくれた。
「今晩7時から、○○団地の緑公園にて映画を上映します。お誘い合わせの上、是非来てください。繰り返します・・・・」
と、軽貨物の拡声器から映画おじさんがアナウンスをした。母親から100円もらって、50円でマウンテンデューのシャーベットを買って、50円を入場料で払ってブルーシートの最前列を陣取った。野外だから、虫も集まってくるが、全然気にならない。7時少し過ぎると、おじさんがたどたどしく挨拶をして早速映画が上映された。カタカタカタとフィルムを回す機械の音が印象的で、薄暗くなった緑公園に照らされた映像は、押入れでピスクラードに懐中電灯を当てている時と重なった。内容はよく覚えていないけど、皆で映画を観るのは気分がよかった。ドキドキした、非日常だった。
この感覚をわすれたくなかった。
そっか・・・俺は皆で感動を共有したいんだな・・・。
映像祭。
沖縄映像祭。
一日の終わりになるような。明日の始まりになるような。
戦場で美しい映像が流れたら人は、武器を置いて見てくれるだろうか?
現実という途方も無いリアリティーのなかで、希望の玩具箱のような映像祭をこの島でまた、開催したい。と、俺は思う。
下ジーン



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